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名古屋地方裁判所 昭和58年(ワ)1240号 決定

申立人 社団法人 全国宅地建物取引業保証協会

右代表者理事 須永正臣

右訴訟代理人弁護士 雨宮眞也

同 川合善明

相手方 更生会社 松下開発株式会社 更生管財人 松田安正

主文

本件訴訟を東京地方裁判所へ移送する。

理由

一  申立の理由

申立人の主たる事務所は東京都千代田区東神田一丁目一〇番六号にある(民事訴訟法四条一項)。

申立人の従たる事務所たる名古屋市西区城西五丁目一番一四号においては認証申出の受付及び概括的審査をするものの、認証申出案件はすべて右主たる事務所に送付され、同所において弁済業務委員会、弁済業務中央審議会の審査を経て会長が認証許否の最終決定を下すのであって、従たる事務所には認証申出の許否を独立して決定する権限はない。従って、本件従たる事務所は民事訴訟法九条の事務所にも該らない。

二  当裁判所の判断

1  商業登記簿の謄本によると、申立人の主たる事務所は東京都千代田区東神田一丁目一〇番六号にあることが認められる。

弁済業務方法書、同細則によると、申立人の会員と宅地建物取引業に関し取引をした者が、右取引によって生じた債権の弁済について権利実行する際には、右会員の所属する保証協会の地方本部に認証申出書を提出すべきこと、右申出を受理した地方本部長は、債権発生の原因である事実を調査し、認証の可否について審査したうえ認証意見書を作製し、認証申出書とともに会長宛提出すべきこと、会長は地方本部長が提出した資料に基づき必要に応じて弁済業務中央審議会の議を経て認証すること、その際弁済業務委員会は地方本部から提出された案件を集中的かつ専門的に審査し、会長が直接認証若しくは認証拒否の決定をなすに足る結論を出すものとされ、同委員会はその目的を達するため、地方審議会に対して必要に応じて追加資料の提出や再調査を求めうることが認められる。

2  民事訴訟法一条、四条一項によると、申立人の普通裁判籍が東京都にあることが認められるので、次に本件訴訟が同法九条に規定する業務に関する訴訟として当庁が管轄権を有するかについて判断する。

同法九条にいう事務所は、独立してその業務の全部または一部を行うことができ、他の場所にある業務担当者の指揮命令を受けないで自ら本来の業務を遂行しうるものであることを要する。ところで、本件訴訟に係わる業務とは認証業務と解されるところ、前記1に認定した事実によると、申立人の各地方本部は認証申出書の受理事務や認証の可否について判断しうるに足りる資料を調査、収集する事務などを取り扱ってはいるものの、認証の最終判断事務は中央本部が掌理し、地方本部限りにおいて認証事務を独立して遂行しうるものでないことが認められるから、本件の従たる事務所は民事訴訟法九条が規定する事務所に該らないと解するのが相当である。

三  結論

従って、本件申立は理由があるから、同法三〇条一項により主文のとおり決定する。

(裁判官 竹中良治)

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